変わらないはずないのに




3月31日にばっさり髪を切って、4月1日からは心新たに、と意気込んでいたのだけれど、そう上手くはいかなくて、特に、何かが辛いとか、何かが苦しいとか、そういうことはないのだけれど、なんとなく、もやもやした気持ちを抱えたまま、一週間を過ごした。


基本的には、昼頃に起きて、ご飯を食べたり食べなかったりして、夕方頃に配達に出掛けて、三〜四時間したら帰ってきて、ご飯を作って食べたり買って食べたりして、だらだら夜更かしをして、午前二時とか三時とかに寝る。

毎晩、寝る前に、何してたっけな、と、思う。今日もまた、同じような一日を過ごしてしまったな、と、思う。

それはそれでいいのだけれど、(それはそれでいいと思えるときもあるのだけれど、)今はそれが、それはそれでいいと思えないまま、なんとなく、もやもやした気持ちを抱えたまま、一週間を過ごした。


何も変わらないなんてことはないはずなのに、春が来ても何も変わらない、と、思ってしまっている。

何も変わらないなんてことはない、と、慌てて、一週間分の日記を書いている。


月曜日、新歓ブースに顔を出した。後輩たちが頼もしかったので、何もすることはなかった。ずっと看板を目立つように持っていた。気付いたら四年代になっていた。

配達中に冷たい雨に降られて、痛かった。恋人の服を借りて、恋人の家に帰った。恋人がミートソーススパゲティを作ってくれた。

火曜日、恋人がオムライスを作ってくれた。恋人が初めて切らした調味料はずばりケチャップ。

夜は、自宅でステーキを食べることを諦めて、ステーキ屋さんでステーキを食べた。また今度、フォークとナイフとマジックソルト、そして、ステーキ肉(夜遅くにスーパーに行ったので売っていなかった)を手に入れることができたら、自宅でステーキを決行すること約束をした。

水曜日、夜、お手伝いをしている劇団の顔合わせにお邪魔した。カードゲームとインサイダーゲームをした。

木曜日、昼、とあるラジオ番組の収録があった。緊張していたのか、帰った途端、ぐったりしてしまった。

夜は、恋人と一緒にチキンソテーとガーリックライスとポトフを作った。お腹いっぱいになって、いつのまにか寝ていた。

金曜日から、朝ごはん(という名の昼ごはん)に、トーストを焼いて、きなこペーストを塗って、牛乳と一緒に食べている。

金曜日、ポトフの余りと目玉焼きとウインナー、土曜日、じゃがアリゴ、日曜日、揚げるだけになっている冷凍のフライドポテトも、一緒に食べた。

土曜日、夜、恋人に誘われて、一時間だけ、カラオケに行った。羊文学を歌いたかったけれど、DAMには入っていなかった。カネコアヤノや平賀さち江やandy moriを歌った。


書いて並べてみれば、何も変わらないなんてことはない。毎日、何かしらがあって、毎日、泣いたり笑ったりしている。別に、泣いたり笑ったりしていなくても、なんとなく、心が動いていて、この瞬間を忘れたくないと思っている。

「この瞬間を忘れたくない」というその気持ちを忘れないために、この日記を始めたのではなかったか。


「この瞬間」は、あまりに些細な出来事ばかりで、どうして「この瞬間を忘れたくない」と思ったのかも忘れてしまう。おそらく忘れてしまうだろうから、忘れたくないと思うのだろうから、やっぱり、何かしらの形で残しておかなければいけないのだと思う。


この日記を書いたからと言って、春につきまとうぼんやりとした不安が消えたわけではないけれど、なんだ、まあまあじゃん、とは、思った。

一週間に一度くらいの方がいいのかもしれない。




配達中に偶然たどり着いた播磨坂さくら並木。



中島梓織

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