私が、勝手に浮いたり沈んだりしている間に、桜は、ほとんどの花びらを落としてしまっていた。

今週は、雨風が強い日が多くて、なんとなく冷たい一週間だったような気がする。それにまんまと振り回されていたのか、そうではなかったのか、よく分からないけれど、私にとっては、とにかく、浮き沈みの激しい一週間だった。

月曜日。

早起きをして、自転車で、学生会館へ。テラスの予約のために、午前五時から午前八時まで列に並んだ。遠足みたいに買い込んだおやつをちまちまつまみながら、霜降り明星のオールナイトニッポン０を聴いていたので、退屈はしなかった。

冷たい雨が降ってきて、冷たい風も吹いてきて、春とは思えない気温だったけれど、帰り際に見かけた戸山公園の桜が綺麗だったので、少しだけ、救われたような気持ちになった。

夜は、早稲田大学演劇倶楽部の新歓ワークショップで「わかる／わからない」について「おしゃべり」をした。新入生も含めて、そこにいる全員が、積極的に相手に反応していて、感動してしまった。

久しぶりに、人前でたくさん話したので、思っていたより疲れてしまっていたけれど、恋人と美味しい焼肉を食べたら、まんまと元気になった。

火曜日。

ひとり多ずもうの稽古があったので、昼間はその脚本を仕上げていた。一人芝居を書くのは、なんだかんだ、高校以来（演劇部の同期が現代社会のなんでも一分間スピーチで披露したもの）なので、脚本を書いていても、演出をつけていても、新鮮。いい体験をさせてもらっている。

夜は、今回、ご一緒させていただく、的場裕美さんと、一対一での稽古。最初から最後まで脚本を読んでもらいながら、ニュアンスの擦り合わせ、ときどき雑談、ニュアンスの擦り合わせ、ときどき雑談、の繰り返し。最後にもう一度、最初から最後まで通して読んでみる。これまでよりも、より、生き生きとした作品になってきている印象。また来週の月曜日に稽古をすることに決めた。

恋人の家に帰って、私がフライドポテトを作って、恋人がミートソーススパゲティを作ってくれた。ごはんを食べ終わってから、銭湯に行って、帰り道に、お酒とお菓子を買った。夜ふかししてしまった。

水曜日。

冷たい雨。低気圧と低気温にまんまとやられて、朝ごはんという名の昼ごはんを食べたあとは、夕方まで、起きたり眠ったりを繰り返していた。さすがに動き出さなければ、と思い、近所のLAWSONでザクシューとくるみとココナッツのキャラメリゼを買って、食べた。

夜は、月曜日と同じく、早稲田大学演劇倶楽部の新歓ワークショップ。前回のテーマは「わかる／わからない」だったけれど、今回は「being／doing」。前回よりも、自分でも明確な答えが出せていない問題でだったこともあり、私も含めた、そこにいるひと全員で、手探りをしながらのワークショップだった。新入生の皆さんには楽しんでもらえたようで安心したけれど、まだまだ、勉強が足りないと思った。「ただいる」ということについて。

恋人の家に帰って、私がジャーマンポテトを作って、恋人が手羽先の唐揚げを作ってくれた。ビールが美味しい！

木曜日。

風が強かった。窓ががたがた鳴っていて怖かった。配達に出掛けるつもりだったけれど、断念して、体調もあまり優れなかったので、昨日に引き続いて、夕方まで、起きたり眠ったりを繰り返して、昨日に引き続いて、初動は、近所のLAWSONで、八天堂とコラボしているフルーツサンドを買って、食べた。

約二ヶ月ぶりに病院に行った。そして、今回から、病院を変えた。もともと通院していたところへは、地下鉄で約二十分移動しなくてはならないのが苦痛だったのと、約二ヶ月間、薬を服用していても服用していなくても、同じくらい「なんとなく不調」だったので、セカンドオピニオンを求めるのも兼ねて、自宅からも、恋人の家からも、自転車で通える場所の病院にした。

薬は、毎日決まった時間に服用だったものが頓服になり、不安感が強いとき、外出前、人と会う前など、自分でタイミングを選んで、服用することになった。診断書ももらった。

久しぶりの病院で、案の定、とても疲れてしまった。お腹がきりきりしていた。家に着いてから、すぐに、爆睡した。恋人がステーキ肉を買って帰ってきてくれたので、すぐに、覚醒した。念願のお家でステーキを達成した。銭湯にも行った。勝ちも負けも、何もないのだけれど、逆転勝利をしたような気分だった。

金曜日。

恋人と吉祥寺に出掛けた。駅ナカで差し入れと、メルヘンのサンドイッチを買った。いちごサンドとおぐらサンドとたまごサンドとカツサンド。たまごサンドとカツサンドは半分こずつたべて、恋人はいちごサンド、私はおぐらサンドをそれぞれ全部食べた。

吉祥寺シアターで、オフィス上の空プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』黄チームを観た。

せっかくだからと吉祥寺周辺を散策していたのだけれど、途中で体調が悪くなってしまい、帰らざるを得なくなってしまった。こういうことがあると、立ち直るのに結構な時間を要するくらいにヘコんでしまう。泣いてしまう。

恋人の家に帰ってきて、せめて何かしなければ、と思い、近所のスーパーで、カレー粉とお惣菜コーナーにあったトンカツを買ってきた。昨日、ステーキと一緒に食べたポトフが余っていたので、カレー粉を加えて、カツを載せて、カツカレーにした。

交際を始めて11ヶ月目の記念日だったので、寝る前、感謝の気持ちを伝えた。

土曜日。

ようやく穏やかな天気。あたたかいし、晴れているし、風もないし。気持ちよさそうだったので、外に出て、LAWSONで、ザクシューを二つと、チーズのパンとチョコのパンを買ってきて、ザクシューは一つずつ、パンはそれぞれ半分こして食べた。

学生会館で、新人訓練（演劇倶楽部にその年に入部する、いわゆる「新人」が集中的に稽古を行う期間）についての相談を受けた。経験があっても、時間が経っても、簡単な言葉では片付けられない問題が山ほどある。からこそ、それにひとつずつ丁寧に向き合っている後輩には、尊敬の念すら覚える。本当にかっこいい。今年度は、直接、新人訓練に関わるということはないのだけれど、自分にできるだけのサポートはしていきたいと思う。

夕方はひたすら配達をした。帰ってから、恋人と一緒にラーメンと餃子を作って、（袋ラーメンの調理と冷凍餃子の調理をして、）食べた。

日曜日。

目覚めの気分がなぜか最悪で、朝から、ぼろぼろ泣いた。ぼろぼろ泣きながら、昨日の食器を洗って、朝ごはんの準備をした。

なぜあんな気分だったのか、これを書いているのは日曜日の夜だけれど、よくわからない。落ち込んでいたというか、なんだか、そわそわ、というか、いらいら、というか、いつもは不安感のほうが強いのだけれど、今朝は焦燥感のほうが強かった。朝ごはんを食べて、薬を飲んだら、落ち着いた。

昼は、早稲田小劇場どらま館で開催された「どらま館シンポジウム」に参加させていただいた。早稲田演劇の中でも、劇団を主宰させていただいている身として。劇場や演劇環境について、一時間半たっぷりお話をさせていただいた。（夢中になってしゃべりすぎてしまったような気もしている。反省。）いちばん身近な劇場と、こうして、膝と膝をつき合わせてお話ができることは、とても幸いなことだと思う。果たして、在学中にまたどらま館で公演ができるかは定かではないけれど、ぜひ、在学中にできるだけの貢献をしたいし、凱旋をしたい、ビッグになって帰って来たい、という野望も、実は、ある。

夜は、昨日に引き続いて、新人訓練について。今日は、後輩たちの話し合いに同席させてもらう形だった。余計な口出ししない、余計な口出ししない、と自分に言い聞かせながら、それぞれの話に耳を傾けていたけれど、確実に思えることは、彼女らは、どんどん頼もしくなっていっているということ。まだまだ課題はたくさんあるけれど、きっといい夏になると思う。最後まで、しっかりと、見届けたい。

ぼんやりした希望と、ちっぽけな絶望の繰り返し。

忙しさに気を取られて、当たり前のことを、当たり前とも思えなくなってきている気がする。

それはよくない。

私が、本当に見落としたくないものは、希望でもない。絶望でもない。安心であること、安全であること、健康であること、そういうこと。何も考えていない、けれど、何かを感じている、そういう瞬間。名前のない感情。

忙しさに気を取られていてはいけない。私が、勝手に浮いたり沈んだりしている間に、私は、勝手に忘れたくないことを忘れてしまっている。

2019.04